咀顎目(そがくもく、Psocodea)は、昆虫綱の1目。伝統的にはチャタテムシ目(噛虫目、Psocoptera)とシラミ目(Phthiraptera)に二分されていた。これらは現在でも便宜的に使われるが、亜目などに格下げされたのではなく、正式な分類群としては認められていない。
なお、シラミ目と訳しうる分類群にPhthirapteraとAnopluraの2つがあるが、以下では単にシラミ目というとPhthirapteraのこととする。
伝統的な2目のうち、チャタテムシ目は側系統である。シラミ目は、マルツノハジラミ亜目が別の系統に属するので、多系統である。
伝統的には7亜目に分かれる。このうちコナチャタテ亜目は側系統であり、分岐分類学的な立場からは認められない。そのため、シラミ目の4亜目をコナチャタテ亜目Nanopsocetae下目に含めるなどの分類が提案されているが、確立した系統分類はまだない。
古い分類での3目は、それぞれ生態に対応している。
かつては、チャタテムシ目(噛虫目、Psocoptera)、シラミ目(裸尾目、Anoplura)、ハジラミ目(食毛目、Mallophage)の3目が置かれていたが、その後、シラミ目 (Anoplura) とハジラミ目をシラミ目に統合し2目とすることが主流となった。
2目は近縁と思われており、1982年、2目の上位分類として咀顎類Psocodeaが提唱された。ただしこの時点では、2目は共に単系統だと思われていて、目としてあつかわれていた。とくにシラミ目はその生活環の全てを哺乳類または鳥類に寄生してすごすという稀な特徴があり、多くの共通派生形質を共有していたことから、単系統性が強く信じられていた。
その後、形態を使った系統学的解析により、シラミ目とコナチャタテ亜目が姉妹群をなし、チャタテムシ目は側系統だと考えられるようになった。しかしこの段階ではまだ、シラミ目は単系統だと思われていた。
しかし、18S rDNAを使った分子系統学的解析により、シラミ目とコナチャタテ亜目の系統は複雑に入り組んでいることがわかった。シラミ目マルツノハジラミ亜目が他の亜目と別系統であることが判明し、シラミ目は多系統であることがわかった。したがって、共通派生形質は、寄生にともなう収斂進化であったとみなされる。