ネムノキ(合歓木、Albizia julibrissin)はマメ科ネムノキ亜科[1]の落葉高木。別名、ネム、ネブ。
葉は2回偶数羽状複葉。花は頭状花序的に枝先に集まって夏に咲く。淡紅色のおしべが長く美しい。香りは桃のように甘い。果実は細長く扁平な豆果。マメ科に属するが、マメ亜科に特徴的な蝶形花とは大きく異なり、花弁が目立たない。
イラン、アフガニスタン、中国南部、朝鮮半島[2]、日本の本州・四国・九州[3]に自生する。
陽樹であり、荒れ地に最初に侵入する先駆種である[4]。河原や雑木林に生え、高さは10mにもなる[3]。芽吹くのは遅いが、成長は他の木と比較すると迅速である。
ネムノキ属は主として熱帯に150種ほどが分布するが、その中でネムノキは飛び抜けて耐寒性が強く高緯度まで分布する。温帯で広く栽培され、一部で野生化している。
和名のネム、ネブは、夜になると葉が閉じること(就眠運動)に由来する。漢字名の「合歓木」は、中国においてネムノキが夫婦円満の象徴とされていることから付けられたものである。 ネムノキの就眠運動は、葉の付け根の膨らんだ部分(葉枕)の内部圧力を変化させる仕組みにより葉を開閉する。周囲が暗くなると葉を閉じるが、光を当て続ける実験を行ったところ、体内時計による概日リズムに従って就眠することが判明している[4]。
花言葉は「歓喜」。夏の季語であり、万葉集や松尾芭蕉、与謝蕪村の句に登場する。 長谷川雪旦の『江戸名所花暦』では、綾瀬川河岸のネムノキの眺めが名所として取り上げられている[4]。
ネムノキはキチョウの食草で、時として多数がついて食い荒らされる。また、大型のカメムシであるオオクモヘリカメムシがよくついており、うっかり触ると非常に臭い。 他のマメ科植物と同様に根粒菌と共生関係にある[4]。
漢語では合歓の他に、馬纓花、絨花樹、合昏、夜合、鳥絨などの異名がある。
日本語の方言語彙には次のようなものがある。
観賞用の他に、街路樹としても使われることがある。害虫駆除、鎮痛、家畜の飼料などにも利用される。 塩害に強い特性から、日本では古くから海岸線の防風林として利用されている[4]。 中国医学ではネムの花を生薬として用いる。性は平、味は甘であり、精神安定や不眠解消の効果があるとされる。樹皮にはタンニンが含有され、打撲傷に効能がある。
中国石家荘市の街路樹