イトトンボ(糸蜻蛉、Damselfly)は、トンボ目(蜻蛉目)・イトトンボ亜目(均翅亜目、Zygoptera)に分類される昆虫の総称。
イトトンボ科、モノサシトンボ科、アオイトトンボ科など多くの科を含むが、日本で「イトトンボ」と呼んだ場合は比較的大型のカワトンボ類を除くことが多い。
トンボ科やヤンマ科など、不均翅亜目(トンボ亜目)のトンボは後翅が前翅に比べて幅広いのに対し、均翅亜目は名前どおり前後の翅がほぼ同じ形である。頭部は左右に幅広く、複眼が小さい。腹部も細長い円筒形をしているので、小型の種類では呼び名の通り短い糸くずのように見える。
不均翅亜目が直線的に広い空間を飛び回るのに対して、あまり水辺を離れず、水辺の草の間でぱたぱたと緩やかに羽ばたきながら低く飛ぶものが多い。トンボ類の交尾はオスとメスが輪を作るが、均翅亜目では腹部が細くてよく曲がるため、連結部分がハート型をなす。
幼虫(ヤゴ)も成虫と同様に体が前後に細長い。さらに腹部先端に細いえらが3枚ついていることで不均翅亜目のヤゴと区別できる。
熱帯から亜寒帯まで多くの種類が知られるが、特に熱帯に種類が多い。このうち、南アメリカの熱帯雨林に分布するハビロイトトンボ Megaloprepus coerulatus は体長10cm、開張15cmにも達し、現生トンボの最大種とされている。
日本にも多くのイトトンボが分布する。南にいくほど種類が多いが、本州の山地や北海道に分布するエゾイトトンボ Agrion lanceolatum など北方系の種類もいる。成虫として越冬するトンボとして、オツネントンボ(Sympecma paedisca)、ホソミオツネントンボ(Indolestes peregrinus)、ホソミイトトンボ(Aciagrion migratum)の3種が知られている[1]。キイトトンボ Ceriagrion melanurum は全身が黄色で判り易い。他にもアオモンイトトンボ(Ischnura senegalensis)やアジアイトトンボ(Ischnura asiatica)などは都市部でもよく見かけられる普通種である。その一方、グンバイトンボ(Platycnemis foliacea sasakii)やコフキヒメイトトンボ(Agriocnemis femina oryzae)など環境汚染に敏感な種も多く、これらは開発などで生息地を減らしている。
アオモンイトトンボのオス
Ischnura senegalensis Location 兵庫県芦屋市
キイトトンボのオス
Ceriagrion melanurum
セスジイトトンボのオス
Paracercion hieroglyphicum
モートンイトトンボのオス
Mortonagrion selenion
オオイトトンボのオス
Paracercion sieboldii
モノサシトンボのオス
Copera annulata
ホソミオツネントンボのオス
Indolestes peregrinus
アオイトトンボのオス
Lestes sponsa
オオアオイトトンボのオス
Lestes temporalis